平成21年度メール句会特選

メール句会特選の選句にご協力いただきまして、ありがとうございました。
結果は次の通りです。


11点
401 滅多斬りされ鮟鱇の口残る 岩島 斉
9点
16 新調の足袋の固さも初稽古 岡本道子
7点
427 白息のぶつかり合ひて糶の声 大橋宮子
6点
283 吹き抜ける風が馳走の夏料理 井関晴義
5点
339 国と国分かつ大河や水澄めり 中原一宏
398 ぼろ市に張子の虎は首を振る 古谷あきひろ
102 遥かなる富士は真白や若布干す 岸本隆雄
137 花びらを喪服につけて通夜の客 調 一子
197 洗ひ髪無造作に結ひひとりの夜 伊藤瓔子
4点
2 スコップの刺さりしままに畝凍てぬ 吉川元二
8 縄跳びが宿題といふ冬休み 豊原みどり
55 筆勢で知る健康度賀状読む 小出修三
95 春の雪俳句ポストに積もりけり 竹内柳影
301 先を急く夕日を背ナの秋遍路 古川たけし
340 清水の舞台秋風ほしいまま 河村ひいづ
365 湯上りの下駄音つつむ虫の闇 平島ひかり
22 団欒に息をひそめし嫁が君 調 一子
27 ぼろ市や父も担ぎし歩兵銃 岩島 斉
31 雪しんしん赤き尾灯の遠ざかる 泉 春生
67 寒月や清め塩ふる通夜帰り 竹内柳影
3点
76 残雪に托鉢僧の素足かな 有本 勝
80 雪解の月の雫の落ちにけり 石田柳二
84 サーフアーを眼下の熊野古道かな 池田順子
133 石あれば石に座しけり花疲れ 柏木千枝子
205 日に香り風に香るや薔薇の園 荻野 操
212 蛍火や闇の底より水の音 岸本隆雄
277 うすべりにごろ寝楽しむ帰省かな 左近静子
296 急がねば霧に呑まるる避難小屋 佐々木忠利
314 苔大事石仏大事松手入 池田順子
320 行者宿霊水に浮く新豆腐 古川たけし
361 こんなにも人がいたかと村祭 栃森淑子
1 意気やよしとぞ褒めらるる寒稽古 伊藤瓔子
4 初空へ上がる無人の観覧車 牧野喜代子
7 冬至なれ電柱長き影を曳き 前田嘉宏
9 筆始背筋伸ばして墨を磨る 小川辰也
19 染めたての髪黒々と初鏡 瀬戸とめ子
21 湯の町を貫く川のおぼろかな 高橋宣子
32 裸木となりし街路樹空広し 永田百合子
36 長生きをしてくださいと初便り 池田章子
2点
63 日を刎ねる鈴をつけたる納め針 竹内柳影
77 日だまりは一足早き梅の花 島村三重子
89 息切つて駈け来る子等と野に遊ぶ 佐々木忠利
91 立ち消えとなりし縁談春寒し 高橋宣子
101 聞き役になりて捗る毛糸編む 小出修三
110 徐々に減る夫のクスリや春を待つ 河村ひいづ
116 細腕のたつき支へし針納め 左近静子
127 オルゴール鳴らして納む雛かな 柏 節江
136 引越の荷の手付かずや花は葉に 中澤幸子
138 山門に吸はるるさまの落花かな 古谷多賀子
140 蜷の画く迷路は出口なかりけり 奥原尋嘉
142 手鏡のごとき余呉湖や山笑ふ 池田順子
158 溝さらへ馴染みし顔の老けにけり 吉川元二
171 水門を抜けて反転夏燕 國本桂伸
172 道草の鞄ころがる花の土手 中原一宏
174 雲海の紅一点の日の出かな 森雅紀
187 踏切の音を遠くにのびる摘む 永田百合子
216 波音のひびく朝寝の旅枕 左近静子
233 代掻きて泡ふく泥の海となる 丸谷領一
235 自己主張ばかりする子の髪洗ふ 中澤幸子
255 日盛りに影が地を這ふロープウェイ 平島ひかり
263 退院は嬉し炎暑の家なれど 堀内淑子
285 警策の音のみ聞こゆ安居寺 柏 節江
286 孫帰り仏も帰る送り盆 藤崎倉太
288 唐崎の老松今し蝉しぐれ 永田百合子
290 白河の関まで八里雲の峰 藤崎倉太
310 旅鞄詰め終え夜の長きかな 高橋宣子
332 敬老日長寿の猫を労わりぬ 辻本興雲
367 シャボン玉港の見ゆる丘に吹く 古谷多賀子
378 すがれ虫鳴くや荒磯の遊歩道 中原一宏
382 稲架並び砦のごとき棚田かな 高橋宣子
390 配達の自転車で来る夜学生 安西信之
6 大広間雪見障子を高く上げ 荻野 操
11 カレンダー取り替へながら年惜しむ 青木英子
12 家族みな一路順風去年今年 左近静子
13 回し読む本の届きぬ冬籠り 池田順子
14 吉と出て血の騒ぐなり初みくじ 岩島 斉
17 年明くる三輪の神鼓の轟きぬ 井上真千子
18 七種の定かならざる粥となり 竹内柳影
23 彼の手を借りて結ひたる初みくじ 竹内柳影
29 坐禅堂籠りの僧の白い息 有本 まさる
33 矍鑠と赤きマフラー老教授 三宅一照
34 ふともらす友の一言初笑 島村三重子
1点
44 白壁へ墨絵を描く枯木影 岡本道子
52 コンサ−ト終へてネオンの街おぼろ 瀬戸とめ子
54 手に句帳杖は不要と梅探る 井口静子
56 幕末の砲台訪ひし建国日 丸谷領一
61 暖かな日を賜りて野辺送り 綿引多美子
65 バス停の風に水仙匂ひけり 高橋宣子
72 ロザリオの少女寒紅引きにけり 佐藤日田路
74 春昼の屋台込み合ふ六区かな 池田章子
78 地図を手に降りし駅舎に雛飾る 池田章子
83 除雪車の手間取るほどや今朝の雪 石田柳二
85 それぞれが枝を占拠し囀れる 泉 春生
88 水温む鯉の動きの鈍からず 瀬戸とめ子
92 箒目に弾となりたる地虫かな 井口静子
96 摺れ違ふ人も朧に花灯路 岡本道子
100 鶴の居て亀の居らざる寝釈迦かな 古谷あきひろ
105 同病の相憐れみて花粉症 左近静子
106 日脚伸ぶ下校の列の崩れがち 中澤幸子
107 名ばかりの川とはなりし草青む 豊原みどり
111 風光る高層ビルは窓ばかり 吉川元二
113 珈琲にミルクの渦や春の昼 小林豊治
117 放たれて流れに競ふ稚鮎かな 國本桂伸
118 木々芽吹き萌黄色なる仏母山 藤田かもめ
122 泣き顔の羅漢の像や涅槃西風 藤崎倉太
129 二の膳が女将の自慢木の芽和え 菅野直之
134 落慶の寺を寿ぎ花万朶 島崎裕子
135 見おろしのなぞへ一面つくづくし 井口静子
141 陽炎へる琵琶湖大橋まのあたり 藤田かもめ
143 袖口の殊に煤けし紙衣かな 玉本由紀子
147 花人にまじりて犬の散歩かな 奥原尋嘉
155 招かれて桜を見に来お堀端 永田正勝
160 吊し雛揺らして稚児をあやしけり 小出修三
163 ジャスミンの香る骨董市通り 伊藤瓔子
164 茅葺の低き山門飛花落花 古川たけし
167 代田掻く老いや挨拶応へなし 奥原尋嘉
173 耀ふて鴟尾のまぶしき五月かな  左近静子
176 山の辺の道に目立ちし銀竜草 井上真千子
186 芹洗ふ一束づつの流れかな 有本 勝
189 一泊の遠来の児に武具飾る 柏 節江
198 ペンキ塗り終へ一服や梅雨晴れ間 北崎広治
199 音立てて五人家族の西瓜食ぶ 森雅紀
200 襟足の白きを誇り更衣 左近静子
204 時の日の日時計に日の射しくれず 古谷あきひろ
208 夏川の合流点や竿光る 吉川元二
210 純白やトラピスチヌの庭のバラ 藤田かもめ
214 草刈りし休耕田の広きこと 丸谷和子
215 天を衝くヒマラヤ杉の樹下涼し 藤田かもめ
218 宇宙より聞こえくるかや閑古鳥 泉 春生
224 キャンパスは出入り自由青嵐 三宅一照
232 客待ちの車夫の歯白き日の盛り 中原一宏
241 頂上に着くや否やに霧の湧く 丸谷和子
244 待てど来ぬバス恨めしき炎暑かな 井関晴義
245 闘竜灘風に畳みし日傘かな 玉本由紀子
257 暮方の空のみづいろ行々子 石田柳二
259 海に向く蜑の寄せ墓青葉潮 柏 節江
262 古書市や糺の森の樹下涼し 河村ひいづ
270 奔放の萩括らむとかき抱く 奥原尋嘉
272 一蔓に一果のメロン日々太る 小出修三
275 新涼の路地に研師の店開き 佐々木忠利
276 待ち合す図書館の前夏休 丸谷領一
278 カトリック墓地も賑はふお盆かな 豊原みどり
280 戯れに付きたる鐘の音涼し 河村ひいづ
282 子つばめの生きんがための口を開く 瀬戸とめ子
287 食べ物を詫びつつ捨てる敗戦忌 鈴木ロジー
289 真向に刃筋を通す大西瓜 佐藤日田路
292 今朝もまたひとつ見つけり蝉の穴 菅野直之
297 敬老日カラフルな杖貰ひけり 池田順子
299 桟橋に魚臭匂ひて秋暑し 吉川元二
304 秋暑し油浮きたる船溜り 前田嘉宏
307 日陰出て一歩ためらふ残暑かな 奥原尋嘉
328 遠富士に紅の差したる秋入日 池田章子
335 山上の雑木隠れに秋入日 池田章子
341 走り過ぐ雲もまた良し月今宵 前田嘉宏
343 古戦場踊太鼓のひびきけり 小川辰也
344 湖の風冷えて来たりと句帳閉づ 井口静子
348 松越しや離宮に遅き月昇る 池田順子
352 石塊も墓碑の一つや露深し 佐々木忠利
353 美術館長蛇の列へ秋の蝶 岡本道子
356 虫すだく離宮に残る舟着場 荻野 操
357 富士見えずとも鏡凪初鴨来 古谷多賀子
359 花消えて茎のあはれや曼殊沙華 池田章子
368 宮島の松の間に間に紅葉かな 豊原みどり
371 たんぽぽの返り花して異人墓地 古谷多賀子
373 ご法話の隙間風など気にならず 佐々木忠利
375 威勢よく笛鳴る薬缶今朝の冬 古川たけし
379 冬仕度せかせる山の照り翳り 牧野喜代子
380 入れ歯われ河豚雑炊を吹きくぼむ 國本 桂伸
388 さきがけは池畔の一樹櫨紅葉 平島ひかり
395 診察を待つ間のマスク息苦し 藤崎倉太
397 ダム底に水尾引くは鴨来たるらし 池田順子
405 便利屋と呼ばれて今日は松手入れ 瀬戸とめ子
411 天井は幾何学模様暖炉燃ゆ 藤田かもめ
412 登校児見つつ門掃くちゃんちゃんこ 河村ひいづ
415 ぼろ市や刀に並ぶ鉄兜 古谷あきひろ
416 意を決し戸外に出れば冬ぬくし 吉川元二
424 あれ手抜きこれも手抜ひて年用意 菅野直之
425 煙突は精錬所跡山眠る 池田章子
430 人影の失せし公園木の葉散る 辻本興雲
433 あたふたと失せ物探す師走かな 有本 勝
434 ただならぬ不景気なれどおでん酒 池田宏治
435 禁酒説く主治医も仲間忘年会 菅野直之