強き香の白き花増え夏に入る    嘉宏

故郷へ急ぐよ若葉照る道を      サダ子

照り返す横断歩道夏来る        雅紀

役場にも祭提灯並びをり        信正

夏炉焚き女工哀史をふと洩らす  あきひろ

若楓開けつ放しの写経の間      隆雄

丹精といふにあらねど大牡丹    マサエ

走り茶の味を気にする六十路かな直之

風孕み富士より高き鯉幟        継鳥

差し傘やいよよ艶めく白牡丹    正樹

老ひゆくは定めなりしと更衣     宣子

いましがた呱々の声あり初幟     かもめ

万緑に五重の塔は沈みけり       静子

朴の花峡に見下ろす山路かな     康邦

夏きざす農事日記の予定表       一弘

アトリエの玻璃の大窓緑さす     道子

白薔薇をくぐり抜けゆく白き蝶   斉

有り無しの風に葉擦れの夜の新樹 豊治

とつとつと話す語部夏炉燃ゆ     真千子

ポケットのなきこと不安更衣     智