虫すだく百万ドルの夜景かな	 周雄
手引書と首つ引きなる夜長かな 明美
四五人の降りし山上駅は霧 領一
虫の音に惹かれて露路を曲がりけり 晴義
湖水澄み小指ほどなる魚跳ねる 和子
ゆけむりに人影ゆらぐ良夜かな 隆雄
蓑虫の夕日の中にぶら下がる 拓水
虫すだくライトアップの寺の庭 裕子
簗番に月の歩板の長きかな 由紀子
潮入りの池面を叩く蜻蛉かな 一弘

集落といへど数戸や蕎麦の花     宣子
代筆の恙の便り秋灯下 静子
葛の花匂ふ谷間の始発駅 怜子
金木犀どこまでつづく京の路地 志峰
麻縄に括られ庭の秋桜      聖樹
放牧の向かう一面蕎麦の花 幸子
遅ればせながらも秋植球根を 三重子
下山して仰ぐ月山霧深し 恵子
高原の芒のうねり日は西へ あや子


9月2007
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