啓蟄や六十にして仏門に　　　　多美子
波止ぬくし糶待つ人の屯しぬ　　宣子
初めてとみえぬ畑打ち鍬捌き　　とめ子
百選の棚田を左右に青き踏む　　喜代子
白酒に昔がたりの三姉妹　　　　ひいづ
暮遅し句座終へ畑の一仕事　　　尋嘉
マンホール小さき割れに菫咲き　サダ子
古民家の昏き厩に地虫出づ　　　領一
雛飾る母校は町の資料館　　　　宣子
風傷みせぬは幸ひ藪椿　　　　　幸子

天冠に光る宝石享保雛　　　　　隆雄
親も子も闘志を秘めて大試験　　静子
牛とても嫌ふぬかるみ牧開き　　あきひろ
雑草を分けて出でたり名草の芽　瓔子
立子忌へ着てゆく紬仕付けとる　由紀子
取り敢へず添へ木して垣繕ひぬ　みどり
今日もまた予報はずれの春霙　　晴子
鐘の音の霞に解けて遠筑波　　　倉太
これしきの雨と雲雀の高上り　　多賀子
醜草の中に見つけしたんぽぽ黄　眞千子