マンションの工事現場の曼珠沙華  領一
頂上に着くや否やに霧の湧く   和子
結界の内なる浄土昼の虫     柳影
煤匂ふ古りし竈やちちろ鳴く      聖樹
旅鞄詰め終え夜の長きかな    宣子
台風のそれて上野にこの人出   宏治
自生とぞ札たててあり女郎花   とめ子
ふるさとに帰る家なし秋刀魚焼く 章子
札所寺丈余の萩のたけなはに   静子
敬老日健康靴は膝に良し     厚子

百選の棚田を区切る曼珠沙華   喜代子
駅を出てわが影を踏む良夜かな  桂伸
国分寺跡に千草の咲き乱れ        一宏
目つぶしの海の落暉や秋澄めり  ひかり
芭蕉翁通りし那須野蕎麦の花   倉太
まづは一献居待の月を待ちかねて  瓔子
晩学の今が青春爽やかに     裕子
芭蕉庵の朽ちし敷居やちちろ鳴く ひいづ
棚をくぼませてだらりと糸瓜垂れ 操
学食の大盛の飯豊の秋      広治


9月2017
        
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