鼬穴塗りこめ屋根を繕へり	裕子
北窓を開き引越用意かな	宏治
武蔵野の空の広さや燕飛ぶ　　瓔子
耕すや母の手擦れの鍬軽し　　章子
猫柳瓶にをさまり芽吹くなり　サダ子
小手翳す大和青垣霾ぐもり　　眞千子
利休忌や瑞の供華挿す三千家　由紀子
侵略の新芽立てをる藪枯らし　淑子
金襴の打掛飾るひひなの間   千里
借り手待つ貸農園や春の土　　元二

土筆野やかつて牛飼堤なる　　   信行
籠一つ挟み草摘むふたりづれ　　 操
啓蟄や運動靴のひも確と　　　   恵子
貝雛に目鼻なけれどむつまじく　 幸子
清麗の容姿見飽きぬ雛の宵　    まさこ
たんぽぽやちつともならぬ水琴窟 ひいづ
残る鴨勝手知りたる池巡る　　　 晴子
春雨の気配静かに降り始め      公平
剪定に老幹象の脚めきぬ　　　   和子
薔薇剪定鋏に迷ひなかりけり　　 隆雄