引きちぎる綿の如くに秋の雲 由紀子
宅地化の狭間の黄金豊の秋  領一
午後の陽に紅深めたる秋薔薇 瓔子
友禅を羽織りし模様紅葉山  英二
秋の陽に鱗煌めく釣りバケツ 三重子
長篠の馬防ぎめく稲架襖   広治
田仕舞の煙のべール人の影  とめ子
俳聖殿極まる静寂小鳥来る  尋嘉
稔り田や遠くに見ゆる屋敷林 章子
一叢の薄の招くお茶屋かな  隆雄


ほんのりと川面を染めて秋夕焼 操
棗食むわんぱくの頃なつかしき 和子
聞かぬ名の茸並びて道の駅   晴子
秋風を聞く瞑目の観世音    宏治
小さき子に手筈の狂ふ障子貼り 幸子
紫の幕をめぐらせ古典菊    恵子
張り終へし障子に風の音かすか 眞千子
海原の如く稲穂の波打てる   千里
箸置きに拾ふ紅葉や庭の先   まさこ
登り得ぬ磴の上より木の実落つ 柳影



10月2023
          
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