第65回 虹の会10周年記念那須吟旅

平成18年8月19日、20日



参加者13名
天気19日晴れ、20日雨のち晴れ
宿泊町営いこいの家
集合場所那須塩原駅



10周年の記念に、奥の細道ゆかりの那須、黒羽を一泊で吟行した。
8時36分東京発の新幹線「なすの」で那須塩原へ。駅で一旦集合し、10時発のバスで那須湯本へ。
殺生石と那須の与一が祈願したという温泉神社をを吟行。3時前に「いこいの家」にチェックイン。夕方に第1回目の句会、夜は席題で2回目の句会。
2日目は、貸切のバスで雲巖寺、遊行柳、白河の関址、黒羽の簗、を吟行し、芭蕉の館で句会。計3回の句会であわせて22句を出句した。

第1日目


殺生石

◇新幹線あっという間に到着。その後バスで同じくらいかかり、那須湯本到着後は徒歩。メンバーの皆さんの健脚に感心する。
硫黄のにおう草木のないガレ場で多少くもりとなったのが大変助かった。親不孝者は昔からいたらしい。教傳地獄の由来を読む。千躰地蔵は異様に大きな手で合掌されていた。(淑子)

◇久しぶりに殺生石を訪れて河原の硫黄の煙がすっかり弱まっているのに驚きました。7年ほど前の台風による土砂崩れのなせる業との事でした。(周雄)

◇昔は賽の河原の霊場だったと思うが、芭蕉が来てから段々名所になり、今では那須の観光名所。木道も整備され、霊場の面影は少ない。(辰也)

千躰地蔵

殺生石(後の大きく黒っぽい石)
◇目的地に近づくとバスのドアが開くたびに硫黄の香が流れ込んできます。もうすぐだなとわくわくしていました。何十年振りかの殺生石吟行には、やはり青畝先生をお迎えした時の事が浮かび上がってきます。どなたかの句に「野を横に」の一語を入れた出句がありました。これでいいのかしらと思っている私達に先生はここに来て、この一語をしっかりとらえた句が出来ているとお褒めになりました。それを思いこれを思い殺生石の辺りでじっくりと句作をしたのですが・・・(節子)

◇殺生石の近く、金色の芒がなびく小高い丘に、親狐が麻酔銃を受けて眠りこけているのが、ガイドの説明で判りました。「九尾の狐伝説」の地であるだけにやはり狐が住んでいるのですね。子狐が殺生石の所で死んでしまうそうで、親狐を捕らえて別の場所に移すそうです。(彰宏)
◇温泉神社から殺生河原を見下ろしながら、殺生石へ出る道は大正天皇の「御成道」という標識があった。御用邸の那須でも特別に作られた道路は珍しいのでは。臭気の強い殺生河原を避けたものと思われる。(斉)

◇高原とはいえ、殺生石はさすがに暑かったですが、四阿の中は、涼しい風が通り、ゆっくり出来ました。(操)

◇初めて殺生石に来て、その匂いにはかなり参りました。でも無事に乗り切って句会にも参加でしたことを感謝しました。(ひで子)

◇硫黄に少しあてられ気味で写真を撮り終えてからは風上に居た。温泉神社、赤松林と大きな森があるが、観光開発され又、崩壊寸前の建物もあまたあり、世のはかなさを感じる(智)

温泉神社から殺生河原を見下ろす

湯泉温泉の神木のミズナラ「生きる」
温泉神社

◇温泉神社には大木が多く、このミズナラのほかにも五葉松の立派な木があった。境内には芭蕉の句碑、御製歌碑などがある。(瓔子)

◇温泉神社の水琴窟は、手水鉢を使った排水が落下して受け皿になっている甕が鳴るという様式。耳に竹をあてて音を聞くのが水琴窟と思っていたのでいい勉強。(斉)

◇温泉神社参拝の途中で、早めの昼食にそばやに。一軒を良いことに接客態度悪し。但し味は良い。(智)


温泉神社参道
◇那須湯本の鹿の湯は、正倉院文書に記されていて、1300年の歴史という。男湯は六つの浴槽があり、湯音が40度から48度までわかれている。普通の人は43度位が限度。入湯料は400円。(斉)

◇宿の湯は、那須御用邸の温泉と同じもの。透き通ったきれいな湯だった。(隆雄)

◇普通なら、〆切時間を気にして引き上げなければならないのに、三時過ぎまでも吟行が出来、充実した一日でした。(操)

◇とても楽しい一日でした。俳句の旅は見る物すべてが新鮮に感じられ、殊に殺生石河原が目に入ったときは一瞬たじろぎました。旅に出て句を作ることは、自分自身を新しくする感じがしました。(静子)

◇一次句会の途中、突然すごく深い霧が出てきて、窓の外は真っ白、二次句会の席題に「霧」が選ばれた。(斉)

第1回句会 小路紫峽先生選

灼け石となりて傾く地蔵かな静子
避暑散歩木道とても硫黄の香彰宏
鬼やんま殺生石に近寄らず隆雄
四阿へさし招かるる秋扇節子
羽抜鳥亭午を告げて鳴きにけり淑子
風吹くや硫黄のにほふ芒原
硫黄錆ぶガードレールや旱草
新涼の風吹き抜ける露天の湯

第2回句会 席題「新涼」「霧」

渓風の俄かに冷ゆる網戸かな多賀子
霧の中一軒宿の灯の浮ぶ瓔子
句座に風これぞ新涼とぞ思ふ隆雄
山峡の闇吹く風に涼新た周雄
妄執の殺生石に霧しまく節子
句会又句会と更くる避暑の宿瓔子
霧立ちて雑木林の奥知れず淑子
建て増していびつの屋根を霧走る
盆の僧エレベーターに乗り合す節子



第2日目



雲巖寺
雲巖寺

◇朝起きた時の雨はうそのように晴れて静寂の雲巖寺から二日目が始まりました。(操)

◇快適なバスで雲巖寺へ。高い磴を皆さんが心配して下さるけれど猫と同様、上りは得意でした。でもこれからは自重して句友に迷惑のかからないようにしなければと思いました。お互いに何の忌憚もなく語り合える句友を得たことは幸運だとつくづく思いました。(節子)

◇とんぼや虫が人を恐れない不思議な世界。いつ来ても心洗われるところ(隆雄) ◇雲巖寺は山間の古刹で建物、規模など素晴らしいが、私は新緑の雲巖寺が好き。(辰也)
遊行柳

◇植田のまん中の遊行柳はちょうど日射の強い時間。こんもり茂っているが、美しくはない。その先に温泉神社あり。木下闇に朽ちそうな社が鞘堂におさまっている。賽銭箱もさびついていたが、鈴は良い音を出していた。(智)

◇青田風が吹き抜けて、緑一色だった。近くの茶店で土地のまんじゅうを土産に買った。(隆雄)

青田の中の遊行柳

遊行柳
◇遊行柳の奥、温泉神社のお社があった。古びているが、上の宮と呼ばれているそうで、格式は高いのだろうか。那須名木といわれる大きな銀杏があり、一本で木下闇をなしていた。じっとしていると蝉が鳴き出した。今では、田植といっても人は少ししか出ないが、昔は多くの人が人海戦術で行ったのだろう。
田一枚植ゑて・・・の句を味わう味も違うのではないか。(淑子)

◇遊行柳には西行、芭蕉、蕪村の歌碑、句碑があるが、青畝先生のいらっしゃたときの句は、
「一首の碑一句の碑とて柳散る」。この一句の句碑は芭蕉か蕪村か考えさせられる。(斉)

◇遊行柳に投句箱があるとはさすがと思いましたが、句もないしと思っていると、賞品におそば?がいただけるとのこと、とたんに張り切ってしまって投句完了。入選したらのことなのにと単純さにわれながら失笑。(節子)

◇遊行柳、また季節を変えて来たいものです(彰宏)

芭蕉句碑「田一枚植ゑて立ち去る柳かな」

白河の関址の碑
白河の関

◇関所と云ってもむしろ、城があったという感じのする関所跡だった。(隆雄)

◇関所跡は、奥深く、八百年の大杉には只々驚くばかりでした。(ひで子)

◇白河神社の奉納相撲の土俵の砂が大鋸屑であったのにビックリ。しかし考えて見ると大鋸屑はいくらでも手元に有り、かつ転んでも怪我しないなど、うまいものを考えたなと山国の古人の生活の知恵に感心。(辰也)
黒羽の簗

◇観光簗で鮎の姿は見えなかったが、簗とはどんなものかということが、良く判りました。(辰也)

◇簗では初めて食べた鮎のさしみ、こりこりと甘味があった。鮎の釜飯をずらりと炊いているところは壮観。(淑子)

◇鮎がかからなかったのが残念(隆雄)

◇簗を目の前にして、鮎料理の昼食をいただく。鮎定食か鮎釜飯のどちらかをそれぞれ注文し、出来るまでの間、簗を見物した。子供達が水遊びをしていて、生簀の鮎をかわるがわる覗きこんだりしていた。(瓔子)


芭蕉の館
◇芭蕉の館の和室を句会場に、三回目となる句会をした。時間がなくて、展示や庭をみることが出来なかったのが残念。またの機会を楽しみにすることに。(瓔子)

第3回句会 小路紫峽先生選

遊行柳訪ねんとして露を踏む静子
簗崩れ児らの遊び場とはなりぬ淑子
句碑めぐるスタンプ押して避暑地去る多賀子
落し水ひびける遊行柳かな彰宏
古歌にある白河の関雲は秋多賀子
がれ道の裏参道は草いきれ
白河の関の空堀草茂る隆雄
蝉しぐれ白河の関越ゆるとき隆雄
竹箒一本置かれ下り簗彰宏
那珂川の大簗なれど魚落ちず静子
四阿をしつとり濡らし霧流る辰也
萩乱る開かずの門の石段に節子
急流はチビッコ天国下り簗周雄
川風に浮き上がらんとする日傘瓔子
水落すしるしや赤き旗の立ち
白河の関より返す避暑の旅多賀子
畑には西瓜転がる那須野かな隆雄
稲穂波打ち寄す遊行柳かな

 
参加者のひとこと(二日目)
楽しみにしていた奥の細道の吟旅、元気で二日間終えた事を感謝です。雲巖寺のおごそかな大寺には自然に頭が下がりました。青田に囲まれた遊行柳のなびく姿は何とも良い眺めでした。この会を企てた方に感謝感謝です。(ひで子)
昨夜来の雨も出発の頃から上り、徐々にお天気は回復、暑い一日となりました。雲巖寺、遊行柳、白河の関、黒羽の簗と廻り、芭蕉の館での句会となりました。少しあわただしい一日でしたが、がむしゃらに十句投句、見学も出来、楽しい句会もでき、これで先生の選に少し入れば嬉しいですが、これは天まかせ運任せです。本当に幹事様有難うございました。(多賀子)
遊行柳と芭蕉の館で投句したり、簗でとれたての鮎の焼けるのを待つ間に作句したりと忙しいけれどもとても充実した一日でした。すてきな旅の企画から一際の御世話、幹事様ありがとうございました。楽しかったです。(操)
暑い一日だった。デラックスバスはすばらしかったが、万事スローモーに慣れてしまっているので、時間刻みにはいささかつかれ、特に最後の句会はキャパシティーオーバーでした。下見までして御計画頂いた幹事さんに心から感謝いたします。(周雄)
盆休みも終わり今日で社会人たちの夏休みが終るという日、白河神社で奉納相撲があるという。始まるまでの30分が待てない予定には一寸残念。細身の若い子たちが本格的なまわしをどうしめるのか見てみたかった。しかし、七句五句十句と二日間句にもならない575を駄句駄句と書きつらねた。(智)
一泊二日の吟旅でしたが、奥の細道の名所をたどり、ほんの少し俳人になった気持ちで新鮮で何時もとも違った俳句でした。健康で又、皆様と吟旅したいと思います。お世話してくださった方々に心より御礼申し上げます。(静子)
芭蕉の館にも投句して俳句につかり切った二日間でした。簗場の鮎の美味しかったこと、何から何まで感謝の二日間でした。有難うございました。(節子)
10周年記念の吟旅を無事に終えることが出来ました。奥の細道の名所を中心に吟行する企画で、見たい所が多くて少し欲張ったかもしれません。慌しかったのは申し訳なかったですが、楽しかったですね。会計も黒字となりました。残金は虹の会の繰越とさせていただきます。どうぞご了承ください。ご参加くださいました皆様、心よりお礼申し上げます。(幹事一同)

先生からコメント
記念の吟行句会から楽しさが感じられます。一泊はよろしいです。暑さの折充分ご自愛ください。



追記
遊行柳では、皆で投句箱に投句しましたが、次のお二人の作品が入選しました。遊行柳の投句ではこの二句のみが入選したようです。
「那須広報」に掲載され、また遊行庵にも掲示されるそうです。ちなみに賞品は那須の絵葉書だったとのことです。
ひで子さん、隆雄さんおめでとうございます。

遊行柳讃へてつくつく法師鳴く  平沢ひで子
絶え間なく柳をゆらす青田風   岸本隆雄