8月15日締め切り分
Aグループ
A001 海女の舟潮目ひときわ濃きところ
A002 かなかなに明けては暮るる山家かな
A003 がらがらの山手線来る盆休み
A004 ゴジラになり仁王にもなり雲の峰
A005 まづもって区別がつかず草引かず
A006 みたらし祭手をとる親子川に入る
A007 一弁の蓮や仏足石清ら
A008 炎天の影よたよたともたもたと
A009 遠山もビル群も消し大夕立
A010 葛の葉の茂りて瀬音聞きとめし
A011 今日の秋牛乳壜の触るる音
A012 秋暑しさて献立の頭打ち
A013 習気出て墨ある硯洗ひけり
A014 心よく過ぎたる一日星月夜
A015 舌鼓打ちて土用の鰻かな
A016 大の字になれとばかりの夏座敷
A017 池の面の雨滴とまがふ水馬
A018 定年はいつしか諦念蛍の夜
A019 萩の花大きく咲ける水辺かな
A020 八月や高校野球持ちっきり
A021 反省会とは名ばかりやビール酌む
A022 百日紅散りて静かな亭午かな
A023 百万遍数珠繰るごとく踊りけり
A024 弥栄や民に青田のあればこそ
A025 緑蔭の松本楼は昼灯す
A026 緑蔭や良し談笑の輪の出来て
A027 海女の目に紀伊の山山青からめ
A028 この山の自ら絞りしたたれる
A029 づかづかと測量士入る大夏野
A030 とんぼうの四方より湧くや橋の上
A031 一望の砂のさざ波大干潟
A032 炎昼の音無き町をひた歩く
A033 弓絞る孫を見つめて汗しとど
A034 今朝秋や空調止めて窓開けて
A035 三尺寝ベンチの下を風抜ける
A036 三百年の樹に鳴く蝉の命かな
A037 資料手に平和学習夏来る
A038 朱書なる己の墓を洗ひけり
A039 受診日の骨身に泌みる暑さかな
A040 住み慣れて千葉もふる里星月夜
A041 青鷺の微動だにせぬ佇まひ
A042 大夕立一気に袴と化すズボン
A043 庭の鉢ひっくり返し初嵐
A044 八月やあらため仰ぐ雲の白
A045 豊作のゴーヤ手を変へ品を変へ
A046 盆休み客も電話もなかりけり
A047 岬立つ灯台への道夏の果て
A048 夜の秋ふたたびみたび読む弔句
A049 踊る阿呆血をひくわはれ見るあほう
A050 緑陰や施しを待つ人うろうろ
A051 櫓組むホテルの庭や夏祭
A052 蜥蜴這ふチャペルの門の赤煉瓦
A053 あと少しガイドに言はれ山登る
A054 海女潜る波を小さくきらめかせ
A055 とんぼうのちよと触れてゆく心字池
A056 リュックには庚申の猿秋に入る
A057 化粧品試し塗りせし日焼の児
A058 赫奕と陽に立つ向日葵午後三時
A059 眼差しの見えぬ挨拶サングラス
A060 九十に見えぬと言われ生身霊
A061 向日葵と目の会ひたりし車窓かな
A062 秋立つも信じがたきはこの暑さ
A063 終戦忌その日の句会まず黙祷
A064 水の事故続く哀れや盆休み
A065 酔客にわが好物の葛桜
A066 積み上げし廃車の山や草いきれ
A067 台風下でんと沈着大仏殿
A068 朝ミサに参じ出でたる蜥蜴かな
A069 日焼田を貫く高速道路かな
A070 熱闘の陸上ライブ明け易し
A071 磐余野の道の小田なり稲の花
A072 不忍池のここ極楽や蓮に風
A073 本祭りとは知らざりし人混める
A074 万緑の落人の里産着干す
A075 鳴きやまぬ蝉へ夕べの時鐘鳴る
A076 黙祷や眼裏の色夾竹桃
A077 夕支度厨に回す扇風機
A078 慟哭の平和公園蝉時雨
A079 朝の陽に白く輝く海女の舟
A080 うらめしやいつまで続く戻り梅雨
A081 じいと蝉いま生れたるや死にたるや
A082 異邦人顔見詰め合ひラムネ飲む
A083 炎風の吹込む地下鉄出入口
A084 覚悟して音を待ちゐる遠花火
A085 喧嘩止め秋の小川に魚釣る
A086 肩幅に足らぬ片陰拾ひけり
A087 校舎覆ふ耐震工事夏休み
A088 此処彼処まこと真円蝉の穴
A089 四世代焚く迎火のひとつづつ
A090 初秋やメモとりつ読む歴史物
A091 初蝉の束の間の声夕支度
A092 舌出して右往左往の蜥蜴かな
A093 太陽の恵みの重み稲穂垂る
A094 地下街に人の溢るる灯の盛り
A095 朝毎に来て鳴くミンミン蝉の声
A096 梅雨明けのどしゃぶり雨や軒借りる
A097 梅雨明けの霧ただならず伊吹山
A098 剥く前に俳画のデッサンザ・フランス
A099 白壁の冷蔵倉庫波止西日
A100 曝書にはあらず露天に古書を売る
A101 仏足石線描あらは晩夏光
A102 菩提樹の実の遊ばせるたなごころ
A103 漏れ聞ゆ社の笙の音の涼し
A104 囀りや朝の露天湯独り占め
（Aグループ 投句者26名）
Bグループ
B001 ぷるぷると揺れるゼリーを口に入れ
B002 下駄を手に緒の跡赤き跣かな
B003 峡の道無人の家に百日紅
B004 玉の汗涙で拭う甲子園
B005 車止め打ち上げ花火窓越しに
B006 手を繋ぐ刹那も花火上がりけり
B007 終戦日鉄の風鈴鳴りやまず
B008 新桶の柾目清かや墓洗ふ
B009 水槽の隅に動かぬ金魚かな
B010 石工屋の広告燐寸墓参
B011 孫四人寄ってたかって墓洗ふ
B012 太陽と月の架け橋飛行雲
B013 陰見つけ線路工夫の三尺寝
B014 炎帝やフライパンめく舗装道
B015 山鳩の声きれぎれに今朝の秋
B016 社の憩いアルコールの無き暑気払い
B017 震災の遺構離れぬ赤蜻蛉
B018 生身魂曽孫の結婚嬉し泣き
B019 息をすることも苦しき炎暑かな
B020 朝まだき手の刈り込みの庭の芝
B021 夫漫ろ祭囃子の遠からず
B022 裏返しウエットスーツ月に干す
B023 裏路地の向ひ合せの木槿垣
B024 蟬急に肩に止まりて鳴き始め
B025 サングラス内は目にしむ玉の汗
B026 花日傘くるくる回し散歩しぬ
B027 外露地に点点見ゆる蚊遣香
B028 鬼やんま交みて水面打ちにけり
B029 心太口に運ぶや老夫婦
B030 桃届き近況報告長電話
B031 肉球の柔きざらつき秋に入る
B032 白青黄夏シャツ乗せて電車行く
B033 不夜城の豪華客船星月夜
B034 綿菓子や子供神輿に付き添ひて
B035 グランドに感謝の子らに大西日
B036 コンソメのゼリーに沈む夏野菜
B037 火の粉散る手筒花火を抱く勇姿
B038 腰おろし一言かけつつ草を引く
B039 若者のヒッチハイクや炎天下
B040 特攻の基地跡尋ぬ蝉時雨
B041 仏壇に活けし白百合開きたる
（Bグループ投句者12名）