4月清記

4月15日締め切り分



1	ディズニーのバケツが鉢の菫草	
2 ひとり居の夕べに恋し春炬燵
3 ひとり言言ひては笑ひ四月馬鹿
4 ふり返る病窓の灯の桜越し
5 やはらかき薔薇の棘へと飛花落花
6 お花見や東海道を上り来て
7 香煙の天誅墓所や遅桜
8 花吹雪レースカーテンめき吹かれ
9 花茶席男点前の凛々しき背
10 皆同じ顔を持ちたる新社員
11 吉野線各駅停車花の舞ひ
12 建礼門院出家の寺や風光る
13 催事場超満員や花の雨
14 菜園にホ−スの出番春深し
15 支へ木を抱き込むごとし豆の花
16 粛粛と音無し川を花筏
17 春疾風国旗掲揚ままならず
18 惜春や午後には消える富士ならむ
19 坪庭の玻璃開け放ち春惜しむ
20 豆の蔓仕事に小さき実りあり
21 特急も臨時停車や花の駅
22 奈良古都や訪ふ寺々に花御堂
23 縄電車花見の席を巡りけり
24 飛花落花千石船にフォトモデル
25 風さつと煌めく芹の流れかな
26 風光る眼下拡がる城下町
27 靖国や集ふ御霊の花万朶
28 余生なを聖書の厚み春深し
29 羊歯若葉炭焼小屋に人を見ず
30 落椿桜田烈士の墓の前
31 旅疲れ佳き釣釜に癒さるる
32 連山となり絨毯のごと花の山
33 しずけさや輪廻参道梅明かり
34 武蔵野の空の広さや燕飛ぶ
35 落花待ち椿の大樹見上げけり
36 花吹雪見事に舞ひし終舞
37 花筏あそばせをりし城の濠
38 花冷えやあえかに笑ふ飛鳥仏
39 花冷えや坂また坂の長楽寺
40 虚子忌待つやぐらに一本置き傘が
41 玉垣を掻い潜り生ふ蕗の薹
42 畦を塗る機械ゆるゆるゆるゆると
43 古池や倒れし古木に亀の鳴く
44 耕の土生き生きと匂ひけり
45 催花雨に光る蕾や朝桜
46 自動ドア―閉まるを戻す春疾風
47 若葉風野点の幕を翻し
48 姓も書く犬の鑑札四月馬鹿
49 戦争の爪痕深し山躑躅
50 太閤の好みし手水緑さし
51 大欠伸して春昼のバスを待つ
52 着物の娘乗せて花下行く人力車
53 直会の禰宜の捌きや桜鯛
54 入学す担任の名を復唱し
55 農老いてひもすがら摘む桃の花
56 百万の花嫁のごと八重桜
57 風向きに路面隠せる花吹雪
58 並び待ち甲斐あり甘茶うまかりし
59 墓守お桜に任す無住寺
60 目覚めよし豌豆の花白じらと
61 夕桜見て盛り場の灯を目指す
62 洋館の壁沿ひ続く落椿
63 羊歯若葉してイノシシの落とし穴
64 落花霏霏ダム湖魚釣り禁止札
65 キリンの顔ぬつと突き出る花曇
66 小流れの芹に思はず指濡らす
67 サッカーを真似て頭突きやしやぼん玉
68 スキップの児もゐる下校の一年生
69 春の海道をなしたる潮目かな
70 フリジアや空き家なれども一面に
71 めくるめく日射しを受けて土手桜
72 羽ばたきの大きく聞こえ鄙のどか
73 衛士小屋の篭に山積む春落葉
74 沿線の花を楽しみ句会へと
75 夏日てふ予報うとましまだ四月
76 花の山バス誘導の笛鳴らす
77 花下にチェロ凭せかけたる楽師かな
78 祇園社の婚の二人や風光る
79 御手前の所作嫋やかや若葉光
80 江戸図会の名残をとどめ梅は実に
81 行厨の後は木登り花見の子
82 思ひ出すこと恐れずにお花見に
83 春落葉青の乱舞のきらめけり
84 純白のスカーフ際立つ新入生
85 浄土へと旅立つごとし花の坂
86 職退いて図書館三昧春の昼
87 赤紐で括る提灯花まつり
88 宣教師訃報の届く復活祭
89 大久野島夫婦の旅は春うらら
90 鳥語聞くバス待つベンチ里の春
91 藤棚の房にあまねく風遊ぶ
92 読経の子守歌めく目借時
93 菩提寺へ母の手を引く桜狩
94 葉桜やネオン瞬く八重洲口
95 蕾割れ緋牡丹の色ふくらみし
96 蝌蚪の群れ生存競争よーいドン
97 おさまれば何処吹く風の藤の花
98 こだわりも何もなけれど春うれひ
99 つくばひの手元にほのか花明り
100 にょきにょきと覗く筍比丘尼寺
101 春の空胡粉で描きしやうな富士
102 家墓が続く谷戸あり花辛夷
103 花は葉に未練残さぬ潔さ
104 花ふぶき村に最後の野辺送り
105 花下に酌む義理の間の三姉妹
106 海霞大橋けぶる明石の門
107 干涸びし亀の甲羅や池遅日
108 慣れるまで母の付き添う入学児
109 吉野へと流るる雲や西行忌
110 甲斐駒を遠見に芹の水豊か
111 笹鳴きや歌姫越えの旅人に
112 仕事終へむすび頬張る花の下
113 師弟句碑訪ふや春雨夫婦岩
114 試歩の吾を励ます妻や初ざくら
115 寺普請さくら吹雪の横なぐり
116 春日ちらほら寿福寺の石畳
117 女坂寺の裏手へ落椿
118 小さき靴片方残る花莚
119 信号に止まる足下蒲公英黄
120 清水寺の覆いいつまで花は葉に
121 駐屯地の長き塀沿ひ花万朶
122 椿落つところに選挙ポスター貼る
123 天は地を地は天称へ蒲公英黄
124 内緒ねと乙女椿は囁けり
125 噴水の如く真つ白雪柳
126 片栗のなぞへに小さき馬頭尊
127 満開の花下に仕舞や夢心地
128 囀りのさえずりを呼ぶ宮の杜
(投句者32名)