7月清記

7月15日締め切り分



1	あぢさゐの小径鳥語の夕べかな	
2 うじ虫はどんな虫かと孫が問ふ
3 子馬遊ぶ白詰草の丘美し
4 サツカー熱昂るテ レビ夏の夜
5 名水を誇る吉野や冷奴
6 モノクロの映画の果てて大夕焼
7 一隅はぐちやぐちやのまま田植終ふ
8 演壇に向日葵置かれ顔の如
9 炎天を来し白バイに険しき眼
10 夏蝶の乱舞す松の廊下跡
11 夏帽の鍔信号を遮りぬ
12 根上りは地球を掴み樟茂る
13 糸蜻蛉幾度となく見失う
14 出迎への義父のステテコ姿かな
15 象鼻杯観蓮会でいただきぬ
16 新牛蒡香りただよう厨かな
17 新品の登山靴手に眠りつく
18 人声に目覚む二見は夏至祭
19 青空に上がり輝く夏の雲
20 朝曇山鳩の声三拍子
21 日傘さす女をうらやむこの日差し
22 梅雨空に響く水車や窯の里
23 梅雨明けを宣言の夜は満月に
24 噴水の風の飛沫や親近感
25 片蔭に寄るパレードや列細し
26 宝物殿涼し天女は楽器持ち
27 万緑や飛沫に歓声瀞下り
28 厄介なもの投げ入るる夏炉かな
29 緑陰のふかふかの土ベンチ置く
30 蓮咲いて蠢く蜂の浄土かな
31 薔薇の園声かけがたし句作の師
32 鄙に住む幸と終日ほととぎす
33 梅雨晴や天橋立真一字
34 螢川大宮人の狩場あと
35 モーニングティーの香ほのと山帽子
36 握りたしマイクロフォンめく蓮の実を
37 飲み水のここも売り切れこの極暑
38 雲の峰天駆け昇る象の如
39 花弁閉じ機を待つ蓮の緑立つ
40 帰省して母また小さくなつてをり
41 急坂を選びし登山日矢一条
42 近道とある札古し登山道
43 形代に撫で漏らしたる一ㇳところ
44 原宿のお召しホームに草茂る
45 胡瓜まあ三日の雨に育ち過ぎ
46 終日を倦まず唸るや草刈機
47 拭はれもせず頬伝ふ玉の汗
48 水槽に新入り金魚馴染み初む
49 赤向日葵ムーランルージュてふ名前
50 村々に小さき教会青葡萄
51 大夕立枯山水の変化かな
52 誕辰の号砲と聞く梅雨の雷
53 殿を一度は見たき蟻の列
54 田の底を脱兎のごとく蝌蚪跳ぬる
55 電線に音符めくかな夏燕
56 電柱に凌霄花巻き上る
57 入道雲立ちはだかりて富士隠す
58 白鷺やつくねんと佇つ鶴見川
59 百合抱いて下り来る三輪の巫女二人
60 片陰は先客があり東大寺
61 名刹の谷を埋めて七変化
62 夜鍋して今年も辣韭漬ける妻
63 老鴬や吾はこの山家五十年
64 罹災地に溽暑厭わぬボランテイア
65 くちばしで弄ばれし金亀子
66 句碑の辺に翁の笠めく梅雨の茸
67 恋螢「かくれ里」とはこのあたり
68 ただ唖然未体験なる梅雨出水
69 トマト茄子箱植ゑにして路地住まい
70 一望す里田百枚風涼し
71 燕とぶ太極拳の昼稽古
72 河童忌のアマゾンで買ふ文庫本
73 絵手紙や文字なく涼しき果実のみ
74 閑散の校庭囃す蝉時雨
75 蟻塚や液化現象めきし砂
76 狂ひ咲く仙人掌の花今日も又
77 肩揉んでくれる孫ゐて昼寝覚
78 山荘の鳥語のかくや明易し
79 師を偲ぶ生田の森の涼しさに
80 湿原の木道長き日の盛り
81 手土産を忘れぬ律儀帰省の子
82 首振るはもう止めにした扇風機
83 色迷ふ濃いめ薄いめサングラス
84 神棚の榊の萎える暑さかな
85 草刈りの音休みなき日の盛り
86 太陽の塔内の螺階に汗しとど
87 池隔て枯山水や風涼し
88 滴りの崖のすきまの草の丈
89 登山道ここが最後の水汲み場
90 梅雨明けや瘡蓋となる灸(やいと)跡
91 美人画の団扇に交通キャンペーン
92 百鉢の蓮いま盛り西大寺
93 病棟に願ひさまざま星祭
94 蓮よりも蠢く蜂にカメラマン
95 蓮花を激しく揺らす天狗風
96 贔屓チーム敗れいやます暑さかな
97 いつのまに我が家の窓になめくじら
98 落ちてなほ泰山木の花毅然
99 すもも酸し自己肯定のし難き夜
100 ソフアーより落ちてびっくり三尺寝
101 ハーブ園足湯にハーブ浮き涼し
102 茨線の延延嘉手納基地の夏
103 雨上がりミミズ這い出す遊歩道
104 雲の峰スカイツリーを前立ちに
105 遠景の飛機を追ひ越し夏燕
106 夏痩せもせずに老いたる婆元気
107 汗の胸押す聴診器遠慮勝ち
108 空蝉は衛士の箒に転げけり
109 後継ぎの腕の時計や田草取
110 高階を音なく抜ける風涼し
111 七夕に誂へ向きと笹手折り
112 鐘楼の影で仮装や盆踊り
113 振る舞ひのうどんの匂ふ茅の輪かな
114 新盆やお供へ物の乗りきらず
115 真っ直ぐに句誌積む座卓夏座敷
116 生きるみち待つのみとあり蟻地獄
117 羨まし海にざぶんと泳げる子
118 滝音や苔むす柵を伝ひゆく
119 長雨や庭に雷待つ陶狸
120 背にリュック胸に児を抱く汗の母
121 八ヶ岳踏んまへ信濃太郎かな
122 飛行機とバスとの繋ぎ炎天下
123 飛行機の昇りゆくなり雲の峰
124 百合匂ふ山家や人の息吹なし
125 腹の銀光らせ鮎の岩守る
126 菩提子の風に飛び立つ構へかな
127 毎晩の麦茶煮出すを手間とせず
128 野の花を活けたるのみの夏座敷
(投句者32名)