11月15日締め切り分
1 秋晴や風に乗り来る応援歌
2 おしやべりに誘はる秋思あるらしき
3 くちづけて満天星紅葉の紅欲しき
4 せめて良き一句が欲しい文化の日
5 短日や買物の荷の増えてゆき
6 案山子見ぬ田の続きたる過疎の村
7 宇治橋の擬宝珠に影や秋惜しむ
8 雲の影去りて金剛山（こごせ）は錦せり
9 雲海のごとく朝霧月山湖
10 可愛さに衝動買いのシクラメン
11 亀が来て鯉来て池の冬ざるる
12 菊花展どれも甲乙付け難し
13 逆立ちの鴨はシンクロしてをりぬ
14 球場に冬日の満ちて静かなり
15 検診を済ませて安堵日向ぼこ
16 行く秋の空放牧やひつじ雲
17 坂登る先を仰げば後の月
18 残り蚊のびんずる像の鼻の上
19 秋灯嬉しき時はすぐに泣き
20 新蕎麦の旗が目印深大寺
21 新米や米穀通帳在りし頃
22 新米を炊きて巻頭祝ひけり
23 石垣に彫らる家紋や石蕗の花
24 石庭の消息として石蕗の花
25 草紅葉踏みつつ巡る産業祭
26 即入院冷たき声を虚ろにす
27 短冊の力作ならぶ文化ノ日
28 吊るし柿楽お奏でるやふな影
29 凍つる夜の裸電球古本市
30 防犯灯照らすつつじの帰り花
31 老の秋とは縁なきポール・マッカートニー
32 老夫婦話好きなリ夜の長し
33 脇道へ香りの元へ金木犀
34 巫女達の笑ひ響くや神の留守
35 唇に歌をのせたる小春かな
36 竹筒に入れてと無人柿を売る
37 とうぼうに頭の上を超えらるる
38 ふるさとの夕日ひとしほ秋惜しむ
39 燕去って築地市場も失せにけり
40 我よりも流行りの服の案山子かな
41 看板の叫ぶ案山子やムンク展
42 紅葉照り眩む如き浮舞台
43 三輪山に弓月巻向秋澄めり
44 四阿に妍を競ひし菊花展
45 四百年残る石垣落葉踏む
46 時計塔端然として日短
47 秋の草刈りて仕上げや塩を撒く
48 勝ちに沸くベンチ総立ち秋高し
49 小賀玉の蕾と紛ふ実の数多
50 城跡に行厨開く秋遍路
51 吹き方の三人三様ひよんの笛
52 水底の泥を煙に鴨の足
53 赤セーター着ても隠せぬ顔の皺
54 浅漬けの食む音高し朝ぼらけ
55 短日やこんにやく作りやつと終ゆ
56 知恵鴉咥へて落とし胡桃割る
57 長き夜や膝を打ちたる推敲句
58 蔦紅葉蔓の後先濃き淡き
59 庭に愛づ菊は夕餉に膾で出
60 点滴と余生減りゆく日短か
61 冬至湯の柚子の余りはママレ―ド
62 二本杖ついて出てゆく散歩かな
63 念願の古都の散策小六月
64 平遠や秋の夕焼け澄み渡る
65 片仮名の名前を貰ひ甘藷なる
66 門前に小流れ疾し秋の水
67 落ち葉掃くテーマパークの魔法使い
68 栞とす句帳はみ出す柿落葉
69 ウオーキング腰を正して秋高し
70 災害の爪痕に降る時雨かな
71 スカイツリー見上げ下町花八つ手
72 パン食べて能を見に行く文化の日
73 ひと煮立ち待つきりたんぽ焼き目良し
74 よく動く老母目で追ふ小春かな
75 吉野へと続く道てふ紅葉燃ゆ
76 よちよちの子にも意地あり秋天下
77 遠足のバスに手を振る親ごころ
78 角切の勢子も大いに勇みをる
79 菊の絵の揃ひの半被菊花展
80 散々なスコアの口実初時雨
81 残るとは侘しきものよ木守柿
82 自然園臭木の花に迎へられ
83 秋晴れや眼下鳴門の渦いくつ
84 秋天の遠筑波嶺や眼鏡拭く
85 初冬や早くも着たるちゃんちゃんこ
86 小春日や猫に遊ばれている女
87 松島の波はキラリと鯊日和
88 蕉門の一哲の墓冬すみれ
89 青竹を組む結界や秋日和
90 早朝の祇園散策秋簾
91 大賞も佳作の菊も芳しき
92 大和富士低しとぞ鷹舞ひにけり
93 団栗や波卿の墓に山をなし
94 朝刊をめくる指先今朝の冬
95 冬立つ日てふにほつこり野辺散歩
96 猫と吾とかぶりつきたる秋刀魚かな
97 半月は東の空に大根買ふ
98 病室はいびきの坩堝夜の長し
99 明るく暮らせとポインセチア贈る
100 立冬や燭無き堂に観世音
101 良く笑ふ吾子をくすぐり縁小春
102 蟇股緑青映ゆる秋の晴
103 句材にと吹いてみせたるひよんの笛
104 猿害と農夫の嘆く冬菜畑
105 たまりたる雑事をこなすこの小春
106 タワマンを縫ふ飛行機や秋澄めり
107 どの菊も威儀を正して審査待つ
108 ふはふはと日に溶け入れり雪蛍
109 ゆきばんば基角の墓に消えにけり
110 りんご詰め放題といふバスツアー
111 一家族適ふ三人七五三
112 寒鴉喰ひ散らしたる塵捨て場
113 護送車の赤き警光秋の暮
114 皇居なれ亭亭と松色変へず
115 自転車の冷たきサドル駅遠し
116 自分史の行間深き夜長の灯
117 秋高し遥かに光る茅渟の海
118 春慶塗紅葉と競ふ船屋形
119 色鳥を追ふ自転車のカメラマン
120 体育の日なり歩行は三千歩
121 短日やカアテン閉めて去るナアス
122 虫の音に囲まれ眠る波卿かな
123 長き夜の神話悲しき星座かな
124 庭草の穂丈の影や十三夜
125 湯の宿の土産とくれし新暦
126 濃淡や銀杏黄葉の並木道
127 農具小屋覆ひて紅葉蔦かずら
128 廃屋の塀お食み出す花八つ手
129 拍手涙に敬老日コンサート
130 被爆地を編隊飛行鳥渡る
131 籾殻を焼く煙らし峡の村
132 野路菊や忘れないでと引き止める
133 蘭陵王舞ふ神前や紅葉の賀
134 炉開きの朝もう一度畳拭く
135 妍競ふとはこのことよ菊花展
136 棹なさずひとかたまりの鳥渡る
（投句者34名）