12月清記

12月15日締め切り分



1	この日しか空かぬ友との小晦日	
2 さし足に猫の立ち入る落葉山
3 墨染の裳裾長々山眠る
4 大伽藍築いてをりぬ霜柱
5 ともかくも検査結果を待つ師走
6 ボーナスを貰いし頃がなつかしき
7 やることを手帳に記す師走かな
8 一寸先が闇と言ひ日記買ふ
9 賀状書く郵便番号五十年
10 戒名は本名で良し寒昴
11 気が付けば外は真暗日短
12 魚の棚市場や白菜積み並べ
13 具に包丁要るも要らぬもおでん鍋
14 月冴える最終バスに列長し
15 御師の宿しんしんとして霜夜更く
16 参道を深紅に染める散紅葉
17 重ね着に破れジーパンや伊達男
18 小春日や和み地蔵に手を合はす
19 沼閑か雨に拉ぐる枯葎
20 杉玉や新酒仕込みの麹の香
21 大根の値段は曲がり具合らし
22 誰もゐぬテニスコートや冬日差し
23 着ぶくれて齢まともに晒したる
24 登城坂に落葉で描くWELCOME
25 汝が唇の白き息にぞ労はる
26 葱買うて道中差しや下げ袋
27 猫いつも聞き役ばかり日向ぼこ
28 片や咲き片や山茶花散り敷きぬ
29 木枯や水子地蔵の古玩具
30 野路菊の乱れ伏すなる蕪村句碑
31 来し方を一部始終や榾の宿
32 おでん鍋囲み気の合ふ友と酌む
33 コンビニに定着したるおでんかな
34 ただひたすらに極月の盲導犬
35 天蓋は色濃き紅葉弁財天
36 道中記紅葉一葉栞とす
37 ワイパーで落葉を払ひ出発す
38 黄落を気にせずスマホ夢中の子
39 河豚鍋や何の記念と夫の聞く
40 花蓼や狹井川までの朝散歩
41 柿紅葉しがみつきたる古木かな
42 鴨の陣車懸か鶴翼か
43 寒波来ぬ博多と言えど背は丸く
44 菊花展この菊日本一の菊
45 旧帝国奈良博物館十二月
46 紅葉散る清浄池に金の鯉
47 歯の治療予約を取るも年用意
48 就活のことはさておきおでん酒
49 常緑の枝に金粉銀杏散る
50 吹きおこる風に駈け出す落葉かな
51 数軒の空家続きに落葉積む
52 天を突く磴に思案や紅葉冷
53 冬帝の襲来にはか街震ふ
54 日蔭へと色を匿ふ冬紅葉
55 日向ぼこ先師の句集膝にかな
56 日向ぼこ鳩がゆっくり近づき来
57 買いてすぐ履きし手袋年の市
58 父と子の囲む焚火の絆かな
59 蕪村碑の長堤行けば小春風
60 片手にものる盆栽や櫨紅葉
61 又動く箒の風の落葉かな
62 木守柿鬼門祓ひと残しをり
63 おでん酒陽気に愚痴をこぼしをり
64 この一年嘘か誠か年送る
65 白洲跡欅落葉の褥なす
66 照紅葉八一の歌碑に傘をなす
67 ビル写す枯蓮の間の水鏡
68 ぼろ市にクレープを売る屋台かな
69 異動あり不安の多き年の暮
70 乾坤に浮遊一瞬落葉散る
71 詰め放題両手も添へて積む蜜柑
72 古壁の錆釘の新暦かな
73 古里産大根のよし辛味そば
74 枯葉舞う中心に立つ西郷像
75 枯蓮の骸骨めきてみちのく路
76 紅葉かつ散る百体の仏にも
77 山茶花の白に囲まれ道祖神
78 枝たわわ貧乏柿と言ふ勿れ
79 初霜やラジオ体操聞こえ来て
80 進みたる母の痴呆や冬浅さし
81 水滴の絶えぬ蹲紅葉浮く
82 短日や今日で会社を辞すと云ふ
83 庭師来て草木の適ふ十三夜
84 土手行くも下道行くも恵方かな
85 冬眠に備へる如き腹回り
86 凍雲や昼を灯して船の笛
87 南禅寺一会の人と秋惜しむ
88 年ごとに減る枚数や賀状書く
89 舞い散りし桜紅葉の裏表
90 蕪村忌の近しと立てる毛馬堤
91 名園に閉ざす書院の白障子
92 夜鴨鳴く池黒黒と暮れにけり
93 腕伸ばす空は無限や冬木の芽
94 うすうすと草にまぎるる冬の蝶
95 お百度や吾を見守る暦売
96 花八つ手弾けてゐても地味な花
97 晩秋や奥宇陀の景いろもなく
98 一本の倒木太き枯野かな
99 我が声を良く知る犬か青き踏む
100 関ケ原あまねきわたる鰯雲
101 襟立ててゴミ袋提げ霜の朝
102 行く年や医師に余命をにぎられて
103 今日もまだ喪中欠礼来る師走
104 煮返すもよしとあれこれおでん種
105 秋の蝶小さきハートの形して
106 小春日やいつものベンチで紫煙上ぐ
107 水門のアーチ縁取る蔦紅葉
108 素つぴんを手軽に隠すマスクして
109 貸農園人それぞれの冬囲
110 大口の西瓜提灯笑むがごと
111 大寺の猫は日向に冬すみれ
112 短日や句会終はれば足早に
113 虫喰ひの更地を杞憂十二月
114 冬菜畑肩寄せ合ひて育ちけり
115 冬凪や釣果のバケツ巡り行く
116 冬木の芽粗密の網をひろぐごと
117 冬木立砂丘の果ての日本海
118 豚汁や園児持ちよる冬野菜
119 二上山勇姿を包む冬茜
120 白鳥の餌付女母の如き声
121 病む人の眠りたる間の日向ぼこ
122 満員の電車にすべり込む枯葉
123 陽は落ちて広場にサンタ駆け廻る
124 凩や飛機の音する朝まだき
(投句者32名)