2月清記

2月15日締め切り分



1	垣間見の僧房の庭梅一輪	
2 かぎろひの丘をた走るきぎすかな
3 ガヤガヤと集団登校息白し
4 ゴ−ルせし人馬春泥まみれかな
5 ポストめく巣箱掛かるや森の口
6 緑青の点苔あまた梅古木
7 歌垣の里に舞ひ舞ふ涅槃雪
8 噛み締むる釈迦の教へや涅槃講
9 寒なれやまたも朝湯の訃報来る
10 鬼やらひ日にちの変わる五分前
11 弓を執る道場の床凍返る
12 空いている布団のにおい夫の留守
13 結ぶ緒の色のとりどり受験絵馬
14 腰越状したたむ像に春の雨
15 菜の花や離宮を渡る夕汽笛
16 春寒や我が作業着の立ち姿
17 春立つや生絹のやうな朝の靄
18 信玄の祖の地に赤き梅の花
19 深閑としてマンションは雪ごもり
20 身の軽ろくなりて寒明け歩の軽ろし
21 静養といふは退屈毛糸編む
22 苔むせる老樹の枝に冬芽凛
23 大寒やグラスの水を一息に
24 炭継ぎて飛び上がりさう釜の蓋
25 朝日浴び光る鯱鉾淑気満つ
26 底冷えや百度石立つ石畳
27 豆撒きやヴィトンのバックかっと開け
28 白壁の造り酒屋や春近し
29 飛梅の匂ふや多摩の空青く
30 満席の御座船ゆるり水温む
31 野梅咲く畑は宅地に変はれども
32 睥睨の高枝に視線寒鴉
33 梅の坂雲のふえゆく空へ伸ぶ
34 亀石のとろりとした目春の午後
35 ぐい呑を選べる飲み屋夜半の冬
36 しづけさにカーテン開くや牡丹雪
37 もり蕎麦に一本つけて梅の茶屋
38 浦の街雛は蓮葉の衣なる
39 屋根屋根に粉砂糖めく春の雪
40 加賀島津の刻印石や下萌ゆる
41 学生が相合傘で雪の中
42 寒月や静寂破りて救急車
43 寒紅を濃くしトロフィー胸高に
44 寒鴉横穴古墳の前で鳴く
45 漢方薬早目にと飲む春の風邪
46 岸の鴨間合いをはかるかに微動
47 吟行の一日や春の雨止まず
48 菰巻の湿布めきたる松古木
49 春寒し街道沿ひのぬれ仏
50 裾を引く涅槃図に展ぶ緋毛氈
51 草青む天守の礎石囲むごと
52 鳥去りて花弁三片になりし梅
53 汀線に花いちもんめ磯遊び
54 電飾よ寒満月に跪け
55 凍結路の出勤見下ろす鴉かな
56 凍返る「春」の歳時記絵空事
57 豆を撒く度に翳りし空の青 
58 薄氷やへっぴり腰で畦辿る
59 蒜や五葷は駄目と云はれても
60 平成の今年限りの七日粥
61 味噌汁の葱のさみどり春隣
62 余寒かな効き目わからぬ薬増え
63 立春や化粧直しの舟屋置く
64 立話聞くかや椿頷きて
65 あちこちに野焼の跡や峡の村
66 春禽の案内す参道水分社
67 まづ先にやらずの垣を繕へる
68 ラッキーや帽子に当たる福の豆
69 牡丹雪地に落つまでの命かな
70 音も無く滑る襖や雪の朝
71 霞立ち天守の鴟尾はあのあたり
72 掛け声に足裏翩翻寒稽古
73 金剛のしまくとみれば葛城も
74 句碑たどる酒蔵の町春浅し
75 見送りは一塊や勇魚船
76 故意のなき寧き言葉や凍て弛む
77 公園を通り抜けたる探梅行
78 座布団のごと開き生ふ冬菜かな
79 山路行く落葉踏む音道連れに
80 宗教は魂なりと涅槃僧
81 春の雪日暮早めて降りしきる
82 上役の賀状じまいや老哀し
83 申告を嫁御にたのみ婆元気
84 数ふるも食むも難儀や年の豆
85 青々と育つ菜の花疏水べり
86 雪虫の乱舞八つ橋渡るとき
87 草餅や不安を封ず血糖値
88 中央は朝ドラ女優豆を撒く
89 泥の田を持ち上げてをる霜柱
90 湯冷めかと思ふスタンド消しにけり
91 豆を追ひ戯る猫や福は内
92 薄氷や光りて水は堰を落つ
93 蛤の酒蒸汁を祝膳に
94 病床に聞く恋猫の昼ドラマ
95 蝋梅の香り仄かやペダル踏む
96 蝋梅や飴細工はた蝋細工
97 ガス燈の残る湯島や梅白し
98 スニーカー買ひ替え春を待ちにけり
99 春光へ観葉植物茎伸ばす
100 絵馬堂の四囲どよもして豆を打つ
101 寒がりの恩師偲ぶや藪柑子
102 今いちど曜日確かむ朝寝かな
103 笹鳴けるここ道詮の墓所
104 山鳩のくぐもる声や里のどか
105 燦然と真白き富士や深雪晴
106 住職の御朱印達筆あたたかし
107 重ね履く足袋の小鉤の煩し
108 春立つ日一日(ひとひ)気温の跳ね上がり
109 寝かされてストレッチャー固き余寒かな
110 真つ新の風に真つ白梅一輪
111 親に似ぬ仔猫舐めらる終日
112 晴天や梅固けれどこの人出
113 雪原や幼き頃の満州里
114 濁り池濁りしままに薄氷
115 誰もいぬ廃屋なれど梅ふふむ
116 探鳥の人に踏まるる蕗の薹
117 土手道やところどころの犬ふぐり
118 冬晴れや飛行機雲は北目指す
119 冬帝や空の白さを計りをり
120 日向ぼこするひとみんな猫背なる
121 日当りの畑の片隅蕗の薹
122 梅が枝や今日おすすめのお品書
123 買って待つバレンタインのチョコレート
124 放置田にあらず耕す休耕田
125 夕日映え末黒あらはや若草山
126 立ち止まる気配に笹子鳴き止める
127 裃の片袖抜きて豆を撒く
128 インフルで制限される見舞かな
129 鮮やかや東京タワーに夕日射し
130 鳴き声に凄み効かせる恋の猫
131 花芽見て臘梅と知る庭の鉢
(投句者33名)