1月清記

1月15日締め切り分



1	オリンピックイアーの開けて初日燦	
2 カーンコン仕事始めか槌の音
3 寒禽の声の誘ふ園の奥
4 雲厚く初日の出しははや中天
5 寒牡丹ひと声掛けて写真撮る
6 宮邸の森の深さや笹子鳴く
7 古びたるレシピ重宝節料理
8 指先の切られ手袋スマホ用
9 獅子舞の姿に似せるポストかな
10 紙コップの御神酒いただく初射会
11 初髪を気にかけながら乗る車
12 初夢に飲酒許されゐたりけり
13 初夢や幼き頃が浮かび来る
14 松過やトーストの香に目を覚まし
15 乗り初めは卒寿の母と富士を見に
16 寝静まる大学病院除夜の鐘
17 正月は長し短し子等の来て
18 鯛焼の頭尾分け合ふ共白髪
19 読み初めは我が干支子の運勢欄
20 日に倦みてろうばいの金うせにけり
21 猫のごと毛繕ひする獅子の舞ひ
22 年向かふ筝の奏でる春の海
23 煤逃げの囲碁より戻る浮かぬ顔
24 筆太に家族の名入れ祝箸
25 夕映えの雪嶺を見て信濃去る
26 稜線に日の射しはじむ初景色
27 涙目の隠しやう無きマスクかな
28 おてんばも晴著にけなげ成人日
29 お参りを済ますや傍の缶焚火
30 がんぜきを擦り抜けてゆく小団栗
31 それぞれに名札のあれど皆枯木
32 にぎにぎし女ばかりの初句会
33 冬灯青磁の壺の色深し
34 マンションの扉のノブの縄飾
35 叡山は京の鬼門や初景色
36 広過ぎる湖にあはれや鳰の声
37 行く年の連絡船の銅鑼の音
38 歳晩の忙中閑やコンサート
39 三輪山を盾とし素麺高く干す
40 初句会暦に赤の星印
41 初富士やくうっすら白く正面に
42 初夢に現れよと写真眺めけり
43 新暦妻と色変へ書く予定
44 診断を聞きつつ凍りゆく心
45 退職の主治医見送る大晦日
46 凧揚げや高き梢で助け待つ
47 注連飾る今は撞かざる時の鐘
48 長老の装束ゆかし射初めかな
49 冬耕や機械がするといへ一人
50 同胞が一点を見る初写真
51 馴染みなる連綿の文字賀状来る
52 日の差して寒鯉そこにいるらしき
53 這うがごと磴を上がりて初手水
54 銘柄のお屠蘇一口にて旨し
55 おでん屋の親父に語る絵空事
56 すれ違いざまに破魔矢の鈴騒ぐ
57 蝋梅の香に吟行の歩を止む
58 我が背丈越す孫たちへお年玉
59 賀状書く退院の夫待ちかねて
60 去年今年師の新句集ページ繰り
61 近道の路地また路地や初詣
62 空港にずらり銀翼初景色
63 枯木それぞれ様々な貌を見せ
64 御慶述べ二度寝をせむとアイマスク
65 仕上がりを知らせ切り干し香りけり
66 子等の声響く病棟お元日
67 枝伐られあの臘梅花まだ固し
68 耳ありて眼鏡にスマホ掛くマスク
69 実千両庭に丹色(にいろ)の玉粲と
70 受話器より溢れ出る声初電話
71 初夢の茶柱一度二度ならず
72 初夢や定員オーバー宝船
73 色変えぬ松を背に新夫婦
74 声高や忘年会の帰り道
75 智慧の水賜わる寺の初詣
76 電柱の無き農道や凧揚げる
77 風冴ゆる吉田松陰辞世の碑
78 母から娘へ二代の春著よく似合ふ
79 落葉積む長者屋敷の土塁跡
80 六方にむく里芋の白さかな
81 鮟鱇は一気に皮を脱がさるる
82 あつさりの茶漬け喰ひたき四日かな
83 凍雲の隙を貫く日射しかな
84 いつしかに日は傾きて冬の風
85 バイキング料理慎む春着の子
86 ふつくらと肉厚うまし寒蜆
87 わらべ達薄氷を踏むリズムかな
88 嫁が君メトロのホーム見上げをり
89 寒肥をやる算段の庭を掃く
90 宮焚火煙しけぶしと鴉鳴く
91 玉砂利の音心地よし初景色
92 句が繋ぐ縁に感謝や賀状書く
93 枯草やトーテムポールぽつねんと
94 獅子舞の舞台降りれば若娘
95 初日差す机上に開く師の句集
96 初富士や心の秘めしこと聳ゆ
97 松過ぎの五番札所に畏みぬ
98 消防車は子らに開放出初式
99 大小の熊手自在や紅葉掃く
100 凧あげる風の力を糸に手に
101 凧揚げや雲に届くがごと揚がる
102 町会のどんどいつもの雑煮出ず
103 吊るされて口あんぐりと鮟鱇よ
104 日記買ふ献立付きの主婦日記
105 番付に正月場所の抱負かな
106 磐余道畦の片方に野水仙
107 落葉踏み木漏れ日を踏む朝散歩
108 悴む手結び目直す靴の紐
(投句者27名)