4月清記

4月15日締め切り分



1	おふくろの所作懐かしむ彼岸かな	
2 コロナ禍に戦く我を山笑ふ
3 ざくざくと筍を掘る寺男
4 シテのごと鷺の踏み入るみくさ生ふ
5 すばしこし落花幼の手に余る
6 花の屑点描をなす雨後の径
7 ワシントンに寄贈の花の花の孫
8 一花二花花上ぐ長谷の牡丹かな
9 引くまじく武漢てふ名の春風邪
10 花海裳雨に俯き紅挙る
11 顔中で欠伸の乳児日の長し
12 休校明待ち兼ね盛ん飛花落花
13 山の端に簪めきて山桜
14 上げ潮にきらめく川面夕長し
15 杖止めて名残の花に見入りけり
16 吹けば飛ぶ百日草の種を蒔く
17 先先に津軽富士見し花の旅
18 大荒れの萼から千切れ飛ぶ桜
19 朝寝して覚む一瞬の無重力
20 田起しや腰のふらつくボランティア
21 廃校の花下に二宮金次郎
22 奉祝の幟はためき伊勢の春
23 余人には区別つかずと草を引く
24 落椿栄華を残し石の上
25 里山の裾回彩る藪椿
26 蟄居然励ます窓辺緑立つ
27 うぐひすや江戸家のつづくこの至芸
28 コロナ禍の校門閉ざし飛花落花
29 セーターのちんちくりんを惜しみけり
30 花は葉に刺し子の針の進みけり
31 レジ横に見習ひ社員四月かな
32 花筏夕べの風に広ごるる
33 花莚広げしもののこの風や
34 鎌首をもたげ蛇穴出て光る
35 狭井川のほとりに摘みしつくづくし
36 散る花を掴まんとする散歩かな
37 四月馬鹿夢なら覚めよコロナの禍
38 樹木葬墓地に桜の吹雪かな
39 春の花舗コロナ疲れを癒されし
40 春暖や新生児服はや小さし
41 侵略の新芽立てをる藪枯らし
42 赤光の入日に染まる春障子
43 孫の背伸びわれは猫背や春散歩
44 大小の筍値踏み朝の市
45 普請場を薄化粧して飛花落花
46 武蔵野の古き小祠緑立つ
47 仏壇に明るく映る菜の花黄
48 暮れなずむ家路に花菜明かりかな
49 唯一輪空き家の庭にチューリップ
50 廊暗き公会堂や花の雨
51 囀りの挙りて渡る樹から樹へ
52 鶯や見上げる空に朝の月
53 アルコール臭にいや増す春愁ひ
54 たんぽぽ黄遺跡の石を取り囲み
55 のどけしや浜へ園児の列長き
56 みどりごは花にも覚めず熟寝かな
57 安らけき教会の鐘春の昼
58 花ぐもり青垣山の青からず
59 花の旅篤と見上ぐる斜陽館
60 花時を無為に過ごせし思ひあり 
61 花吹雪屋根軽々と越えしまく
62 花万朶鳥絶好のかくれんぼ
63 外出を自粛てふ日々先ず朝寝
64 休業の貼り紙に降る櫻蘂
65 見えぬ敵コロナと闘ふ夏マスク
66 鯉跳ねし池の静もり葦の錐
67 耕しの十人十色貸農園
68 桜咲く妻子遊ばせテレワーク
69 紫にかたごの花の急斜面
70 七種の鉢の薺の育ち良し
71 春寒や街は沈黙コロナの禍
72 春嵐春の空気を一新す
73 朝参りたっぷり灌ぐ五香水
74 土筆原鉄塔跡地は空きしまま
75 塔影の揺るる猿沢池温む
76 微風にも急ぐかに散る辛夷かな
77 落花浴び潜る山門南無阿弥陀
78 冷徹なスーパームーンや花の上
79 いつの間や葉桜覆ふ並木道
80 白粉に汚れしマスク取る自室
81 チューリップみどりごの顔包むごと
82 パンを焼く匂ひの仄と朝寝の間
83 ふらここを競ふ江戸っ子浜っ子たち
84 花の雲旨そうにすら見ゆる夕
85 花屑の土手に轍の筋乱る
86 花道を手押し車の老ひ一人
87 忌を修す虚子庵高吟椿寿居士
88 季節感薄れしコロナマスクかな
89 強風を真面や畑の一本桜
90 咲き始め躑躅鮮やか小夜の雨
91 咲き盛る花も粛然無住庵
92 子供等は裏庭が好き蒲公英黄
93 若桜直ぐなる枝を青空へ
94 出帆の汽笛響くや鳥雲に
95 春の暮鼻歌まじりの独り酒
96 上水の流れに逸る花の塵
97 新緑となる木ならぬ木被災跡
98 大泊瀬小泊瀬花の雨あがる
99 二タ抱へにも余りたる大桜
100 八割に絶縁せとや春愁ひ
101 浮雲へ一気呵成やしやぼん玉
102 野遊びに心晴れゆく忌明けかな
103 羅漢堂父の面影春の風
104 筍の土擡げたる糠買はな
(投句者26名)