5月清記

5月15日締め切り分



1	コロナ渦ゴールデンウィークままならず	
2 コロナ禍の終息半歩夏初め
3 さざ波の光の走る代田かな
4 はつ恋の人のうなじや白椿
5 不服気に横向く雨の紅薔薇
6 プリンセス・アイコの薔薇に初蕾
7 一汗を流す朝湯や青葉窓
8 改元は遠き昔や花は葉に
9 供華にせん切り花用の種を蒔く
10 更衣先づは下着を半袖に
11 咲きのぼり垣を飾りぬ花茨
12 散り敷きてそれと知れたるえごの花
13 蚕豆を地産地消と楽しめり
14 若人よ真直ぐに伸ぶる今年竹
15 若楓重ねて暗き大寧寺
16 春愁や僅か破けしオムライス
17 神苑のほど良き間合い花見客
18 石畳小突く子雀嘴折りな
19 大輪の牡丹媼の手塩なる
20 谷戸の風腹一杯に鯉幟
21 著名人でし小学校柳の芽
22 豆飯や口ついて出る国訛り
23 乳母車過ぎるを待ちて水を打つ
24 畑打ちの後に狸の足の跡
25 皮はらり琅玕生れし今年竹
26 瞑りて偲ぶ昔や昭和の日
27 苺狩り着くなり薫り漂へる
28 コロナなど知ったことかと山若葉
29 コロナ禍にめげじとばかり武者飾る
30 コロナ除け念じてくぐる茅の輪かな
31 そよ風に枝を揺らして山笑ふ
32 降り出しの大粒の雨薔薇を打つ
33 まなかひに万緑の山蕎麦すする
34 メーデーやウイルスを避け音も無し
35 艶やかな牡丹の重き細枝かな
36 気に入りて襤褸の捨てれぬ更衣
37 菊挿し芽さっと水抜く鹿沼土
38 後ろから蝶を狙ひし野球帽
39 行く春の波砂浜に吸ひ込まれ
40 腰越に松籟を聞く義経忌
41 蚕豆やふはふはベッド寝てをりし
42 柴犬の仏顔して聖五月
43 春うらら手を振る御子の笑顔かな
44 省略を旨の句姿今年竹
45 心地よき葉擦れの音や花は葉に
46 新茶汲み覚悟のステイホ−ムかな
47 草庵を訪ふ尼僧あり業平忌
48 足跡を残し苗田を補修せる
49 智恵の水賜はる寺の遅桜
50 直ぐ開く庭から切りし芍薬は
51 爪切つて暇にしてをる立夏かな
52 忍耐の日々新緑の樹下に佇つ
53 母の日やまだ押し慣れぬ乳母車
54 練習船黒潮跨ぎ夏に入る
55 「深夜の里」てふ濃紫牡丹寺
56 タクト振る指揮者はいづこ青嵐
57 ビール手に将来語りし日々懐古
58 一皿の一人のランチ薔薇の卓
59 メール受け財布つかむや春マスク
60 一風に細波立てる紫雲英かな
61 一望の故宮の甍夕牡丹
62 夏霧の晴れゆくほどに日差し増し
63 花蜜柑向かう岸より匂ひけり
64 休校の児らはジョギング緑さす
65 高鳴きに居るを知りけり雉の森
66 三山をと見こう見して春惜しむ
67 種飛ばす気配の草を引きにけり
68 新緑の森林浴や身にぞ沁む
69 人影の疎らな街に風薫る
70 他に絡む棚外れしの藤の花
71 竹秋やひつきりなしに舞ふ茶色
72 朝まだき立ち直りたる菊挿し芽
73 坪庭に紅の群れ咲く著莪の花
74 田水張る畦を双子の乳母車
75 独り言言ひ思ひ出す風炉手前
76 風薫る川に沿ひたる遊歩道
77 菩薩面試しに被る練供養
78 翻りては風に乗り夏燕
79 万緑やおちょぼ口めく朱の鳥居
80 路地裏の奥にまた路地沈丁花
81 豌豆摘みしを持つて帰れてふ
82 考える葦として春惜しみけり
83 コロナ禍の外出自粛花は葉に
84 タイマーをかけて酢〆めの鯵光る
85 ベランダに朝のコーヒー新樹晴
86 みなとみらい何処にありやよなぐもり
87 挨拶をして過ぐる子や街薄暑
88 雨蛙散歩の我を急かしけり
89 牡丹や話上手に育てらる
90 御破裂の山並高し花ぐもり
91 更衣木綿のシャツの肌触り
92 残る鴨三羽の水脈を一にして
93 子燕ら大空斜めに翻る
94 子供の日いくつになっても子は子ども
95 住まい決め伸び伸び優雅燕飛ぶ
96 春愁や効かぬ薬を飲みつづけ
97 初夏の缶チューハイが喉を越す
98 衰へを諾ふ漫歩青葉道
99 晴れ続き如露では足りぬ貸農園
100 静謐やつつじ真白の無住庵
101 巣ごもりの丁度良きかな春ごたつ
102 草引くや端から名前聞く園児
103 二上山の夕日いただき練供養
104 畑打ちの農夫と話す空模様
105 武蔵野の水湧く処燕来る
106 母となりケーキいただく母の日に
107 母の日や花屋の列の和やかに
108 里山や鳥語を運ぶ若葉風
(投句者27名)