3月15日締め切り分
1 タロウクンにならずに済みし合格子
2 にほひをり波の残せし若布屑
3 苛酷なる義なき戦や落椿
4 蒲公英や廃止されたる停留所
5 球根を選る縁日の植木市
6 近頃は石段にがて春彼岸
7 山門の仁王の拳春埃
8 花の下ゲートボールの球走る
9 春一番風呂の小窓をたたきけり
10 辛夷咲く真白き鳥の群のごと
11 進級の試験に備へ図書館に
12 針供養仕立下ろしに袖通し
13 瑞垣に影やはらかし梅日和
14 棚霞む先に薄らやつくば嶺
15 断捨離と句稿ばつさり春寒し
16 土筆摘む 母の思ひ出 ほろ苦く
17 入堂を許され一夜お水取り
18 白梅や雲と見まがふ崖の上
19 微笑みの妣の遺影や雛の客
20 眉優し母の形見の内裏雛
21 防人の歌碑立つ多摩の春霞
22 憂きことを忘れてゐたる初音かな
23 裏庭の白洲に残る寒さかな
24 いざなぎの尊祀りて梅まつり
25 スカートに付き都心まで春の泥
26 そこに愛あるとも見えぬ猫の恋
27 流れ来る雲を迎へて木々芽吹く
28 ひとしきり降る粉雪や買物に
29 屋敷門一歩に乙女椿かな
30 花柄の補強のテープ雛屏風
31 蒲公英の一点畦に灯し初む
32 桐の色いよよ深める雛の箱
33 吟行に野外能見る梅日和
34 豪勢に皿鉢並ぶや梅の宿
35 試験終へ手応へありと微笑みぬ
36 取置きの宝の端切れ雛作る
37 春を呼ぶ 雨よ雑木が 手をひろげ
38 春空へ背伸びをするや大欅
39 春眠の夫を大目や病み上がり
40 床下に食用の鯉水温む
41 新聞の試験問題大試験
42 水張りし田を抜き足に鷺漁る
43 吊天狗居並ぶ埠頭日脚伸ぶ
44 萌ゆ草芽引くや根深く土抱きゐ
45 墨堤の普請進むや早桜
46 未熟児が医学部めざし合格す
47 霾りし紀淡を望む丘に立つ
48 せせらぎに紛れて聴きぬ初音かと
49 タクシーに乗るを躊躇う春の泥
50 初花を撮るや逆光やむを得ず
51 ビルとビル繋ぐ陸橋鳥雲に
52 またとなき明るき声の合格子
53 雨よ来よ流して呉るる杉花粉
54 家苞に草餅を買ふ門前町
55 葛湯吹く 夫の真白き 長寿眉
56 寒戻り衣服の始末はかどらず
57 仇討は武士の美学や春の雷
58 鏡なす湖に映ゆるや花の影
59 古雛や欠けし太鼓の桴削る
60 昨夜の風春一番と報らさるる
61 春寒しATMさえ撤去しぬ
62 食卓の一輪愛でる春の宵
63 挿す椿頭くるりと裏返る
64 沈丁の香に立ち止まる門構へ
65 梅一輪今は使はぬ鶴瓶井戸
66 梅林に動くもの無く香の仄と
67 薄端の水に一蕾桃の花
68 復元の木造校舎梅ふふむ
69 碧天に眩しく咲ける辛夷かな
70 陽を受けて力貯めゐる春田かな
71 コロナ禍の明るき知らせ合格子
72 たんぽぽや富士一望のゴルフ場
73 バス停へ我を止めるな揚雲雀
74 寄り道を楽しむさまに初蝶来
75 一歩ごと軋む木道春寒し
76 駅鳩の電車に入るのどけさよ
77 縁側に開く行厨うららけし
78 佳き人と一期一会や梅まつり
79 久々に顔ぶれ揃ふ弥生かな
80 公園の整備の進み山笑ふ
81 似顔絵の遺影華やぐ桃の花
82 春日差しやさしお百度踏む人に
83 雪解川轟轟唸る頭首工
84 地虫出で八橋の端にひもすがら
85 潮入りの泡立つ池面園遅日
86 停車場にとんとん落とす春の泥
87 店番の媼退屈春日桶
88 美しき 歯を並べをり 桜鯛
89 百歳の講話に集ふ春袷
90 聞き役も取柄となりぬ春炬燵
91 本線と呼ばれし鉄路たんぽぽ黄
92 野の茂み初音に脚を留めけり
（投句者23名）