5月清記

5月15日締め切り分



1	キャンパスの青葉若葉をガラス越し	
2 さくらんぼ摘むが恒例野外句座
3 そつと降れ今満開の薔薇の雨
4 噂ではマンション用地茅花の野
5 夏来るポニーテールに野球帽
6 学校へ坂駆け上がる立夏かな
7 遠蛙聞く寝仕度の四畳半
8 隅田川行き交ふ船や風光る
9 座布団を二つ折りして昼寝妻
10 子を紐で繋ぎ祭の中を行く
11 酒蔵を眺めの昼餉燕とぶ
12 初蛙テラス席へと届きけり
13 身を沈む樹海の中やみどりの日
14 池底に鯉泳ぐ影五月晴れ
15 忍坂の径行き行けばたんぽぽ黄
16 伴侶にも王冠授く白詰草
17 野の川に投げるルアーや風薫る
18 烈風が草に憲法記念の日
19 露天風呂こちらを見遣る水芭蕉
20 囀れる人出避け來し古沼に
21 壁の絵を掛け替へもして春惜しむ
22 さくらんぼ摘む手八丁口八丁
23 マスク取り素顔同士の夏は来ぬ
24 花の雲小祠千木を押し立つる
25 月山の変若水に生ふ水芭蕉
26 菜の花や鳥見の霊時の高からず
27 参道を寄せては返す荒神輿
28 新緑の点描画めく峰走り
29 大蟻が小蟻の列を乗り越えて
30 田植え機を傍に隅々手で植ゑる
31 徳川の番所の跡の緑立つ
32 届きたる薔薇花束を良き壺に
33 飛び入りに響動もすテラス雉番
34 富士粧す十連アーチ風光る
35 武具飾る店で奮発御膳食ぶ
36 風炉茶事の櫂模す茶杓銘「鵜飼」
37 弁当の玉子梅干みどりの日
38 母の日やコンサートの券届く
39 満天星の百花まるでちょうちん袖
40 揉みにもむ神田祭の勇み肌
41 筍の採りて居ぬらしこの跋扈
42 クラーク像指差す地平線立夏
43 ゴージャスと言ふ薔薇の香やわが狭庭
44 さくらんぼふふめば渇き癒えにけり
45 シャカシャカと新馬鈴薯チップ塩塗す
46 釣り糸の先新緑の枝映る
47 花みかん穴師の里の右左
48 桑の実やこの甘さには覚えあり
49 鯉のぼり下ろせば空の広がれり
50 祭笛音色途切れず交代す
51 自転車の将棋倒しや青嵐
52 初恋てふ白薔薇薄き紅を引く
53 庄内に天の鏡の代田かな
54 青空にスカイツリーや神輿もむ
55 掃き終へし庭を眺めの新茶かな
56 誰一人居らぬバス停花は葉に
57 道の駅鉾田メロンに人集り
58 道問ふや応へたおやか京のどか
59 農道は長き橋めく代田かな
60 迷ひ込む床の一片花の宿
61 靡きてはハンカチの花人目引く
62 コロナ禍のマスク外してサンブラス
63 雨上がりことに旨しとレタス摘む
64 花の絵や牧野博士を目差す夏
65 街灯に石のごときは蝦蟇
66 街路樹を風走りゆくみどりの日
67 京も奥襟引き合はす若葉寒
68 肩車されて神輿を待つ子供
69 広ごりて代田眩しや入り日刻
70 香久山を呑まんと勢い五月鯉
71 若き日をたどるキャンパス風薫る
72 人の世の渋滞見へぬ蟻の列
73 吹かれては色めいてをり燕子花
74 睡蓮の白が床しや和のお庭
75 雀の子力の限り飛立ちぬ
76 踏まるるも意に介さずとたんぽぽ黄
77 買う気なく値札眺めの苗木市
78 柏餅米の香りと葉の香り
79 野外句座蜜柑の花の匂ひ来し
80 薔薇園を臨む窓辺にダージリンティー
(投句者20名)